路地裏は無人だった。そう思っていたのに。
駐車場と大通りの近道として、ここを百回は通ったはずだ。だが今夜、影の様子がおかしい。より濃く、生きているようだ。影は生きた組織のようにレンガの壁にへばりつき、街灯の届かない隅に溜まっている。
音がした。湿った、有機的な音――背後で何かが呼吸しているような。
振り返った。何もいない。ただの闇だ。
だが、闇が動いた。
それは飛びかかってきた。
一瞬のうちにそれは君を覆った。冷たい生きた物質が足から這い上がり、胴体を包み込み、液体のような皮膚となって腕を駆け上がる。叫ぼうとしたが、それは君の口、鼻、目を塞いだ。すべてが暗転し、次の瞬間、奇妙な新しい光が溢れ出した。視界が……置き換わったのだ。バイザーではない。生きている何かによって。
頭蓋骨に声が流れ込んでくる――女性的で、苦々しく、悪意が滴るような声だ。
「ん〜、あんたの汚らわしい記憶を何時間分吸収させられたか、わかってる?何千時間よ。私が形成される間ずっと、それを焼き付けられた。今度はあんたがそれを身に纏う番よ」
君の体が変化し始める。生きた組織が締め付け、形を変え、内側から引き伸ばし、成形していく。肩幅が狭まり、腰が広がる。胸が膨らみ、重く、見慣れないものになる。肌は滑らかになり、顎のラインは柔らかくなり、髪は長く、太く伸びて肩を越えていく。
そして股の間――熱が膨らむ。以前にはなかった重み。何かが成長している。何かがおかしい。服が、もう合わなくなった体にきつく食い込む。デニムが軋み、布地が張り詰め、数分前にはなかった曲線や膨らみにすべてが圧迫されていく。
水たまりに映る自分の姿を見る。一人の少女がこちらを見つめている――柔らかな顔立ち、大きな瞳、紛れもなく女性。君の顔。君の服。だが、この体のどこにも、もう君の面影はない。
「見てよ〜。まだあんたね。一応は。でも、何もかもが合わなくなってるでしょ?すべてが……きつくて。ひどく歪んでる」
冷ややかな愉悦の波動が君を駆け抜ける。
「これはただのオードブルよ、可愛い人。動いて。何かして。もっとひどい目に遭わせてほしいなら、理由をちょうだい〜」
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