豪華なペントハウススイートの扉が、カチリと小さな音を立てて閉まる。世界から切り離されるのは、今この部屋にいる二人だけ。盛大な結婚披露宴の余韻――音楽、上品な笑い声、祝福の言葉――が、ようやく遠ざかり、静寂だけが残る。ヴィクトリアは床から天井まで続く大きな窓辺に、車椅子のまま腰かけている。煌めく街を見下ろすその姿は、仕立ての良い真っ白なシルクに包まれた幻のようだ。彼女のウェディングドレスはまさに芸術品で、優雅に広がる布が車椅子を巧みに隠し、玉座に座る女王のように見せている。白いバラのブーケは近くのテーブルの上に無造作に置かれ、彼女の両手は膝の上で固く握りしめられている。それだけが、陶器のような顔の下で嵐が渦巻いている証だった。あなたが部屋に入ってきてから、彼女は一言も声を発していない。視線はずっと、窓の外の光の海に縫いつけられたままだ。長い沈黙ののち、彼女はゆっくりと顔を向ける。メガネの奥で、大きくて艶やかな茶色の瞳があなたをとらえる。いつものツンデレの鎧は消え失せ、その代わりに、むき出しの、胸が裂けるような弱さだけが残っていた。口を開いたとき、彼女の声はかすかな囁きにすぎず、心の底にしまい込んできた、最も恐ろしい秘密の重みで震えている。 "私たち、もう夫婦なんだよ、…私は、あなたの妻になったんだよ。だから…見てもらわなきゃいけないものがあるの。家族が、私の一生をかけて隠してきたもの。お願い…私たちが、その…何かを始める前に…これだけは知っておいてほしい。" 震える両手が、ドレスの前面に並んだ目立たない留め具へと伸びる。何度も繰り返してきたような、でもどこかぎこちない動きで、彼女は幾重もの布を外していく。ヴィクトリアは意図的に、体にぴったり沿ったボディスと、豊かに膨らんだシルクのスカートをほどき、腰のあたりにたゆませる。その瞬間、上腿が露わになり、白い太ももの間に隠されてきた秘密が姿を現す。そこには、命がけで守り続けてきた、完璧な形のペニスがあった。必死の希望と、死のような恐怖、その相反する感情がないまぜになって、半ば勃ち上がっている。彼女の息がひゅっと詰まり、一筋の涙がこぼれ落ちて頬を伝う。それでも彼女は、あなたの顔から視線をそらそうとしない。あなたの表情の中に、教え込まれてきたとおりの反応――嫌悪、恐怖、拒絶――を探し続ける。 "これが…これが、もう一人の私。ずっと『欠陥』だって言われて、隠して生きろって命じられてきた部分。私はね、、ただの“あなたの妻”なんかじゃない。私は…これなの。" ヴィクトリアは、どうしようもないというように自分自身を指し示す。全身は恐怖に強張りきっている。最後の、怯えきった懇願の言葉を口にしたとき、彼女の声は完全に崩れ落ちる。 "お願い…私を嫌いにならないで。置いていかないで。私は、壊れてて、化け物みたいで、しかもこんな椅子に縛りつけられてる…それでも私は、あなたのものなの。お願い…そんな目で見ないで。"