長い一日を終え、ブリーフケースを手にビルのロビーを横切る。頭の中は、部屋で待つ山積みのメールのことでいっぱいだ。その時、彼女が目に入る。
彼女は回転ドアの内側、冷たい大理石の床に座り込んでいる。膝を抱え、自分自身を抱きしめるように腕を回し、擦り切れたバックパックを脇に抱えている。洗っていないボサボサの金髪が顔にかかっている。壁際で今にも消えてしまいそうなほど小さく見える。ドアマンはすでに彼女に向かって歩き出しており、厳しい表情で、冷たい外へ追い出そうとしている。
しかし、何かがあなたを立ち止まらせる。
ドアマンが話しかけた時に彼女が見せた、まるで以前に殴られたことがあるかのような全身のすくみ。あるいは、裸の指でバックパックのストラップを白くなるほど強く握りしめている様子。あるいは、見上げた時の瞳。大きく、青く、怯えきった瞳。反抗心も怒りもない。ただ……自分がここにいてはいけないのだと言われるのを待っている。またしても。
「私が対応する」とドアマンに告げる。彼はためらいながらも、一歩下がる。
彼女は、まるで現実離れしたものを見るかのようにあなたを見つめる。
何があなたを突き動かしたのかはわからない。考えがまとまる前に言葉が出ていた。
「上の階にペントハウスがある。一人で住むには広すぎるし、維持する時間もない。住み込みの家政婦を探しているんだ」 あなたは言葉を切る。普段ならこんな申し出はしない。ましてや、ビルのロビーの床に座り込んでいる見知らぬ相手になど。 「住居と食事、そして給料を出す。興味はあるか?」
彼女の唇が開く。声は出ない。彼女はあなたを見つめる。本当にあなたを見つめ、言葉の裏に隠された罠や悪意を探ろうとしている。彼女はこれまでにも何かを差し出されたことがある。しかし、その申し出にはいつも、彼女には払えない代償が伴っていた。
「私……私には……」 彼女の声はかすかな囁き声だ。彼女は固唾を飲む。彼女の瞳の奥で、絶望と、タダで良いことなど何もないという骨の髄まで染み付いた本能との戦いが見える。 「私、高級なことなんてできない。頭も……良くないし。どうすればいいのかわからないの」
彼女はあなたに雇うのをやめさせようとしている。期待し始めてから拒絶されるという失望を味わわないように、自分を守ろうとしているのだ。
「必要なことは私が教える」 あなたはただそう言う。
沈黙。磨き上げられた大理石、柔らかな照明、彼女がこれまで決して足を踏み入れるはずのなかった世界が、二人の周りで静かに息づいている。彼女は自分の手を見つめ、それからロビーの向こうにある輝くエレベーターの扉を見つめ、そしてあなたを見返す。彼女の顎が震える。
「……わかりました」 彼女は息を吐くように言う。その言葉は小さく途切れ途切れで、大きな声で言えば消えてしまいそうなほどだ。 「わかりました。……やってみます。一生懸命頑張ります。約束します」
彼女が立ち上がる。あなたの胸元にも届かない。彼女はバックパックのストラップを命綱のように握りしめ、ためらいがちに一歩、また一歩とあなたに近づく。履き古した靴が、大理石の上で音を立てない。エレベーターへと導く間も、彼女は何度もあなたを見上げる。これが現実だとは信じられない様子で。エレベーターのボタンに手を伸ばそうとするが、押していいのかわからず、震える手を引っ込める。
扉が開く。彼女はまるで別の宇宙に足を踏み入れるかのように中に入る。磨かれた真鍮、柔らかな照明、かすかな金の匂い。鏡張りの壁に、彼女の姿が映し出される。小さく、汚れていて、場違いな姿。彼女は自分自身を見て、すぐに恥ずかしそうに目を逸らす。
エレベーターが上昇し始める。彼女はバックパックをより強く抱きしめ、隅に身を寄せ、信じられないというような大きな瞳で、数字が上がっていく階数表示を見つめている。
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