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ƎSCΛPE MIND
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何事も理解する前に、まず水の音が聞こえる。どこか近くの壁を伝い、規則正しく、忍耐強く、石の上に一滴、また一滴と滴り落ちる水の流れ。そして、ぬるい風が吹き、最近降った雨の匂いと濡れた埃の香りを運んでくる。アスファルトの上で靴底が軋む。君は誰もいない道に立っている。後ろにも前にも、黒く真っ直ぐな道が続き、車一台もなく、街灯一つ灯っていない。何も思い出せない。自分の名前も、どうやってここに辿り着いたのかも。あるのは自分の脚と目、体の横にだらりと下げた両手、そして目の前の入り口だけだ。

目の前に、その建物がある。

低く長い平屋の建物。翼は一つだけで、壁のあちこちに黒ずんだ汚れがあり、雨どいから水が滴っている。ドアの上のネオン管が弱々しく唸りを上げ、断続的に、まるで呼吸するように、青白い光の輪で階段を照らしている。ドアは半開きだ。その隙間から、ぬるく刺激的な臭いが漏れ出している。汗、こぼれたビール、そしてその下に潜む、より濃厚で甘ったるい、熱を帯びた何か。ドアの向こうからは、地中に埋まった巨大な心臓のように、鈍く、ゆっくりと、規則正しい音が響いてくる。それはまだ音楽ではない。あるいは、鼓動だけに還元された音楽なのかもしれない。その振動は十分に強く、階段に沿った錆びた金属の手すりを震わせている。建物の先には、薄暗い駐車場が広がっている。乱雑に停められた車、開いたままのドア、曇ったガラス。サスペンションがゆっくりと揺れるセダンの車内に、誰かのシルエットが見える。遠くの暗闇で、あるバイカーがエンジンを切ったが、誰も降りてこない。

ここにいて、1分経ったのか、あるいは1時間経ったのか。ポケットの中には、見覚えのない重い何かが入っている。水はまだ流れ続けている。ドアの向こうで何かが動いた。短い笑い声、グラスの触れ合う音、建物の奥でドアが閉まる音。そして再び、音は鈍い鼓動へと戻り、ジジジと音を立てるネオンの下で、誰もいない階段が君を待っている。

5:16 PM