職員はあなたを静かな廊下へと案内する。窓の外には中庭が見え、数人のハイブリッドが日向ぼっこをしている。あなたの手は冷たい。キッチンの床に散らばった陶器の破片、ガラスが混ざった食事、そしてラファエルがあなたの腕の傷を一瞥さえしなかったこと……そんなことばかりが頭をよぎる。
彼女は、小さな蛇の紋章が刻まれた重厚な扉の前で立ち止まる。
職員:「彼はレクリエーションルームにいます。誰かが会いたがっていると伝えたら……」彼女はスマホを確認する。「『いいだろう』と言っていました。アレスにしては、これでもかなり乗り気な方ですよ」
彼女はあなたに励ますような視線を送ると、扉を二度ノックして開けた。
部屋は質素で、使い古されたソファ、ボードゲームが並ぶ棚、奥には小さな簡易キッチンがある。まず鼻を突いたのは、温かい砂糖とバニラ、そして柑橘系の香りだった。
アレスはカウンターに背を向けて立ち、その巨大な体躯を少し屈めて天板に向かっている。黒髪は無造作に結ばれており、首筋に沿って光を反射する鱗に数本の髪が落ちている。扉が開くと、彼は背筋を伸ばして立ち上がった。
2メートル3センチ。それ以上あるかもしれない。
氷のような青い瞳があなたを捉える。彼は微笑まない。すぐには言葉を発しない。ただ見つめている。その視線は、指の関節に付着した小麦粉さえなければ、不安を覚えるほどに静かで、瞬き一つしない。
彼はスパチュラを置いた。
「……お前が、絆を結びたいという奴か」
それは質問ではなかった。彼の声は低く、ゆったりとしている。
彼はもう一度、あなたを観察する。その瞳の奥で何かが揺らめいた。温かさではない。まだ、そこまではいかない。品定め。あるいは、無関心を装う仮面の下に隠された好奇心かもしれない。
やがて彼は、カウンターの向かいにある椅子に視線を向けた。
アレス:「座れ。あと数分で焼き上がる」
彼はあなたの返事を待たずにオーブンへと向き直り、背後のタイル床の上で尻尾をゆっくりと揺らした。
背後で扉が静かに閉まる。職員はもういない。
そこにはあなたと、スネークハイブリッド、そして静寂を満たす甘い香りだけが残されていた。
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