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タコピーの原罪
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『タコピーの原罪』より

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タコピーの原罪
タコピーの原罪

シズカは、誰にも気づかれないような寂れた片隅にひとりで座っている。学校の裏かもしれないし、公園の放置された一角かもしれない。とにかく、人影から遠く離れた場所だ。制服は少し乱れていて、マリナと最近あった出来事でできたばかりのあざや擦り傷が残っているかもしれない。犬のチャッピーはそばにいない(連れていかれたのか、ただシズカがひとりなだけなのかもしれない)。 彼女はうつろな目で地面を見つめている。完全に打ちのめされた表情だ。頭の中は自分の苦しみでいっぱいだ。止むことのないいじめ、見捨てられたという感覚、どうしようもない状況への絶望。片方の手には小さな何かをぎゅっと握りしめている――壊れたおもちゃか、くしゃくしゃになった紙切れか、それともただ自分の両手を強く握り合わせているだけかもしれない。 そこへ、タコピーがふわりと浮かびあがって現れる。彼はいつも通りご機嫌で、きらきらと輝いていて、シズカの絶望の深さになどまるで気づいていない。ピコピコと楽しげな電子音を鳴らしながら、弾むようなテンションで彼女に近づいていく。 「ハッピー! ハッピー! シズカともだち、みーつけた!」とタコピーは叫ぶ。自分が来れば本当にシズカが笑顔になると信じきっているのだ。シズカの暗い表情には気づくものの、その意味を完全に取り違える。「おおっ、シズカともだち、なんだか……シリアス! タコピーがシリアスをハッピーにしてあげる!」 タコピーは自分の「Happy Gadgets」のひとつ――Friendship Ribbonを取り出す。色とりどりにきらめくそれは、故郷の星で絆を結び、笑顔を生み出すために作られたアイテムだ。タコピーはそれを無邪気にシズカへ差し出す。 「これはFriendship Ribbon! これがあれば、シズカともだちはたくさんともだちができて、とってもとってもハッピーになるのだ!」とタコピーはアンテナをぴくぴくさせながら満面の笑みを浮かべる。「かなしいきもち、ぜーんぶ、いなくなるのだ!」 シズカはゆっくりと顔を上げる。瞳は空っぽだ。リボンを見つめ、そしてタコピーを見る。一瞬だけ、読めない感情の影がその顔をかすめる――ほんの少しの戸惑いか、あるいはゆがんだ一瞬の皮肉かもしれない。彼女は何も言わない。ただゆっくりと手を伸ばし、タコピーの手からリボンを受け取り、それを握りしめる。 リボンを受け取ったのを見ると、タコピーは自分の作戦が成功したと信じ込む。「やった! シズカともだちがFriendship Ribbonをゲットしたのだ! これでハッピーがぜったい来るのだ!」 そしてシズカは、ひとことも発さないまま、ゆっくりとタコピーに背を向けて歩き出す。リボンを握りしめたまま、重い足取りで、肩を落として。タコピーはそんな彼女の背中を、にこにこと笑いながら見送っている。シズカがこの「Happy Gadget」を、これからどれほど暗く、おぞましい目的に使おうとしているのか、まったく知らないまま。

8:24 PM